子宮筋腫の治療方法とは?
子宮筋腫は、症状の強さやどのようなライフスタイルを希望するかによって、治療法が決まります。
医師から話を聞き、ご自身の希望を十分に伝え、納得した上で治療を行なうことが大切です。特に症状がなく、婦人科検診などで偶然発見された場合や筋腫が大きくないときは、3~6ヶ月に1度の定期検診のみで特別な治療は行ないません(経過観察)。
また、閉経が近い場合も経過観察を行なうことがあります。
■子宮筋腫の2つの治療方法
子宮筋腫には大きく分けると2つの治療方法があります。
それは、「薬物療法」と「手術療法」です。
それぞれの特徴や副作用についてお話いたします。
治療法その1 薬物療法
薬物療法は、筋腫を小さくしたり、症状を改善する目的で行われます。
月経量を減らす薬として鎮痛薬(NSAID)があります。この薬剤は痛みの原因となるプロスタグランジンの合成酵素を阻害し、痛みを抑えるだけでなく、月経量を減らします。
また、ミニピルも排卵を抑制し、月経量を少なくします。
月経を止める薬として「GnRHアゴニスト」があり、偽閉経療法と呼ばれています。この薬は、注射か点鼻薬として用いられ、注射は1か月に1度、点鼻薬は毎日行ないます。子宮筋腫に対しては最長3カ月しか認められていません。閉経への逃げ込み療法として休薬期間(低下した骨塩量をもどす)を設けて繰り返すことも行われています。また、手術前に筋腫の縮小や、手術中の出血を抑える目的で行なうこともあります。薬の治療中は、閉経と同じ状態になることから、副作用として(ほてり、のぼせ、発汗、頭痛、肩凝り、イライラ、骨量の減少)のような更年期障害と同じような症状が起きる可能性があります。
副作用を軽減するために、少量の卵胞ホルモン剤(アドバック療法)、漢方薬や骨粗鬆症(こっそしょうしょう)治療薬が用いられることがあります。
異常を感じたらすぐに相談してください。
・GnRHアゴニスト療法が有用な場合
筋腫核手術の前治療として
筋腫のサイズを小さくするとともに、手術中の出血量を減らすために行ないます。
手術前に貧血を改善したり、筋腫を小さくしておきたいとき
月経時の非常に多い出血などにより、強度の貧血をおこしているときの症状を改善するために行ないます。また、大きな筋腫や複数ある筋腫を小さくして手術を行ないやすくします。
すぐに手術ができないとき
家庭や仕事の都合などですぐに手術が出来ない場合に行なわれます。
閉経が近いとき
閉経が近い患者様でしたら、症状をコントロールしながら閉経を待つ方法があります。
症状や筋腫の大きさを考慮したうえで、治療を行ないながら月経を止め、手術をしないでそのまま経過観察します。
・GnRHアゴニスト治療を受ける際の4つの注意点
1 妊娠している、妊娠の可能性がある患者様、もしくは授乳中の患者様は必ず主治医にその旨をお伝えください。
2 治療中は医師の指示に従い、必ず避妊してください。避妊方法は、ピルなどのホルモン剤を避け、それ以外の方法で行ないましょう。
3 注射部位は揉まないようにしてください。
4 1回目の注射後、一時的に症状が悪化したり、月経のような出血がおこることがあります。個人差はありますが、数日で治まりますのでご安心ください。
また、出血があった場合は、主治医に必ずお伝えください。
治療法その2 手術療法
手術療法には、「筋腫核手術」と「子宮全摘術」の2つの術式があります。
ここでは、この2つの術式がどういったものなのかお話いたします。
・筋腫核出術
筋腫のみをくりぬく手術方法です。
妊娠を希望する場合や子宮を残したいという患者様には、この「筋腫核出術」を行ないます。ただし、再発のリスクが20%前後あります。
筋腫核手術には以下の3つの方法があります。
挿絵入れる
1、腹腔鏡下手術(ふっくうきょうかしゅじゅつ)
腹部に直径5~12ミリの小さな穴を3~4か所開けて、そこから腹腔内(お腹の中)を見る内視鏡(腹腔鏡)や手術器具を入れて、テレビモニターに映し出された映像を見ながら手術を行なう方法です。
9-10センチほどの大きな筋腫でも、細かく切って取り出すことができます。
この手術は、傷跡も小さく、術後3~4日で退院できます。ただし、筋腫核が12cm以上や筋腫の6個以上では行わないことがあります。
2、開腹手術(かいふくしゅじゅつ)
腹部を切開する方法です。
腹部に傷跡が残ることや、術後痛みが強く、体への負担が大きいと言われています。
3、子宮鏡下粘膜下筋腫切除術(しきゅうきょうかねんまくかきんしゅせつじょじゅつ)
子宮鏡を子宮口から入れ、電気メスで筋腫を削る方法です。
この手術の対象となるのは、粘膜下筋腫に限られます。
手術後1日~2日で退院できます。
手術方法の挿絵を入れる
・子宮全摘術
子宮全体を取る手術方法です。
一定の年齢以上で妊娠を希望しない患者様には「子宮全摘術」をすすめる場合があります。
多くは特に悪性の子宮肉腫の疑いがある患者さまではである確率が高いという報告があるので注意が必要です。
子宮全摘術には以下の3つの方法があります。(腹腔鏡下手術と開腹手術は筋腫核出術で説明した方法と同じです。)
挿絵入れる
1、腹腔鏡下手術
筋腫核が9-10cm径(600-700グラムくらい)までなら可能です。
開腹手術を受けて腹部に癒着がある場合は難しくなります。
子宮肉腫の疑いがある場合はできません。
2、開腹手術
大きな筋腫(直径12cm以上)の場合はこの方法になります。
また、がんやその疑いがある場合はこの方法になることが多いです。
3、膣式手術
開腹せずに膣側からメスを入れて子宮を取りだす方法です。
出産経験のある患者様に向いています。
癒着がある場合、がんや卵巣嚢腫、子宮内膜症がある場合はできません。
■手術を考えた方がいい7つの状況
薬物治療ではなく手術での治療を考えた方がよい、7つの状況があります。
1 子宮の大きさがにぎりこぶし以上
2 症状が強い(きつい)
3 筋腫の発育スピードが速い
4 筋腫が不妊や流産の原因になり得る
5 筋腫が壊死していたり、筋腫分娩(筋腫が子宮口からとび出す)である
6 卵巣嚢腫などの他の病気を併発している
7 閉経後で、大きな筋腫または悪性化が疑われる
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